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  • 執筆者の写真中島 祐哉

焼酎カクテルイベント ─MIYAZAKI SHOCHU EXPERIENCE (2024.1.15)

私たちがカクテルに心惹かれるのはなぜだろう?

それは美しい見た目であり、時に想像を超えた味わいであり、まだ見ぬお酒との出会いでもある。バーなどの限られた店でしか楽しめない点もまた、その一杯への特別感を盛り上げる。


そのアレンジャーとなるバーテンダーには、客側の視点とは異なる使命がある。それはお酒本来の魅力を正しく客へ届けるという、お酒と造り手へのリスペクトだ。

僕が初めてバーボン・サイドカーを戴いたときは、オレンジリキュールの美味しさに驚きしばらくそれを使ったカクテルばかりオーダーしていたし、ソーダ割も飲んでみたくて酒屋へボトルを買いに走ったものだ。知らなければ縁遠かったお酒が、バーテンダーが届ける一杯のカクテルで一気に身近なものとなる。



1月、東京エディション虎ノ門のGOLD BARで開催されたMIYAZAKI SHOCHU EXPERIENCEは、そんなカクテルとバーテンダーのパワーにフォーカスする。日米のトップバーテンダー5名を宮崎県の蔵元に招き、体感した風土・造り手の魅力をオリジナルカクテルとして表現してもらう贅沢な企画だ。


宮崎県は焼酎出荷量日本一を誇る焼酎大国であり、私たちが慣れ親しむ銘柄も数多い。その雄大な自然はグルメの魅力として全国に発信され、呼応するようにバリエーションに富んだ本格焼酎が造られている。

だがその反面、バー業界における焼酎の存在はまだまだアウトローと言ってよい。ウイスキーやジンなどの4大スピリッツのようにバックバーに並べられることは少なく、「焼酎カクテル」は各々のバーテンダーのオリジナルという位置付けを抜け出さない。世界に誇る蒸留酒でありながら、その魅力が十分に発信されていないのが現状だ。



本イベントはその転換点となるであろう。アメリカトップクラスのクラフトカクテルバー「Death & Co.」のAlex Day氏が基調講演としてカクテルの創造についてプレゼンテーションし、パネルセッションではバー業界における焼酎トレンドと今後の可能性についてトップバーテンダーたちが洞察を提供した。



ゲストバーテンダー紹介



Alex Day ─Death & Co. パートナーオーナー

 全米に4店舗を展開するクラフトカクテルバーDeath & Co.の初期バーテンダーにして、現在はバー及びコンサルティング会社の経営を務める。ライターや評論家としても活動し、著書のカクテルブック「Cocktail Codex: Origins, Fundamentals, Formulas」や「Death & Co. Modern Classic Cocktails」は全米で大ヒットを記録。




Tyson Buhler ─Death & Co. F&Bディレクター

 料理アカデミーを卒業後、アリゾナ州の多くのトップバーを経て、2012年よりDeath & Co.でバーテンダーとしてのキャリアをスタート。2015年ディアジオ・ワールドクラスで米国年間最優秀バーテンダーを受賞。1現在はDeath & Co.グループのナショナルフード&ビバレッジディレクターを務める。





Vlad  Novikov ─Silver Lyan ジェネラルマネージャー

 ワシントンのRiggs Hotel内に構えるバーSilver Lyanのジェネラルマネージャーを務める。同バーは2022年Tales of the CocktailでベストUSホテルバーを受賞。







清崎雄二郎 ─Bar LIBRE オーナーバーテンダー

 熊本県出身。ヴィーノジャパン株式会社代表。池袋のBar LIBREをはじめ、ベトナム、銀座と複数店舗を精力的に展開する。2015年ヘネシーミクソロジーコンペティションの日本代表として世界大会に出場し優勝を収めるなど、多数のカクテルコンペティションにて受賞した経歴をもつ。





斎藤秀幸 ─GOLD BAR ディレクター

 ロンドン、ニューヨーク、東南アジア、中東と世界中でバーテンダーとしてのキャリアを積み、Soho HouseやW Hotelなど各地のカクテルバーやホテルで監修を務める。バカルディ・レガシーカクテルコンペティション2017世界大会にてTop8入賞。






 


Alex Day氏 プレゼンテーション


アメリカに複数店舗を展開するクラフトカクテルバーDeath&Co.のパートナーオーナーであるAlex氏は、同バーのこれまでのストーリーとアイデンティティ、そしてカクテルのメニュー開発を支える実務的なプロセスツールを紹介した。


Death & Co.は2006年ニューヨークのイーストビレッジに小さなバーをオープンし、数年のうちにショーを受賞、様々なスタイルの店舗を展開してきた華々しい実績を持つ。その勢いは今尚とどまらず、2024年にはジョージア州サバンナにてホテル事業もスタートする。



ジョージア州にオープンするホテル

ビジネスの加速の裏で、Alex氏が見失わぬよう常に意識していたものが自分たちのパーパスだ。2018年コロラド州デンバーのホテル内にオープンした店舗は、オーセンティックなニューヨーク店とは異なり、大きな窓に囲まれ景色を楽しめる、ホテルの利点を活かしたスタイル。彼らのパーパスとしてきた「カクテル作りを通じて人々が繋がる体験を提供する」ことを体現するフェーズについに辿り着いたと言う。


親会社gin&luckの全米展開は破竹の勢いだ

人々が繋がる体験を提供するには、創造的なカクテルが必要だ。Alex氏はクリエイティビティは天から降りてくることが理想と語りながら、結局は努力して自分で生み出すものであると、彼らの創造力を支える2つのビジネスツールを紹介してくれた。


ワイヤーフレーム

Alex氏が「パワフルなツール」と語るこのマトリクスは、スタイル、ブレーンストーム、レシピドラフト…といったカクテル作りのプロセスを追った5つのステップで構成されている。

彼らのカクテル作りは、まずはスタイルを決め、そのスタイルに必要となる材料をブレーンストーミング、続けてドラフトレシピを考え、制作しフィードバックをもらうというステップで進む。その時のアイデアをこのフレームに記録するのがポイントだ。書き起こすことにより、レシピの調整を視覚的に可能とし、さらにこれまで開発してきたカクテルのスタイルが一覧化されるため、メニューに偏りがないかバランスをチェックできる。




EVERNOTE

彼らのカクテルのレシピとアイデアは、メモ共有アプリのEVERNOTEによりチーム内で共有されている。現場においては、メニュー化されたベースラインカクテルのレシピを参照することで、1000を超えるカクテルのテイストの一貫性を担保するのに用いられる。一方カクテル開発においては、先ほどのワイヤーフレームで綴られたアイデアレベルの情報を共有することで、他のバーテンダーの新たなファインディングに繋がったり、フィードバックをコメントすることができる。




Alex氏はカクテルのメニューに対し、メニュー全体で伝えたいストーリーを表現できているかに着目する。単品のカクテルを一覧化しただけのものではなく、カクテル同士のコントラスト、補完関係の構成になっているからこそ、彼らのバーで過ごす時間は心地よく、人々が繋がる体験を提供できるのだ。これらのツールの運用は、シンプルでありながらカクテルバーの根幹を体現していると言えるだろう。



 

宮崎蔵元ツアーのパネルセッション・カクテル体験


ここからはゲストバーテンダー4名が提供した焼酎カクテルと、その原体験を語ったパネルセッションの模様を併せて紹介する。


斎藤秀幸氏 カクテル名:Imo kind of Daiquiri(芋薫るダイキリ)


本会場GOLD BARのディレクターを務める斎藤氏は、バーテンダーとして世界各国を巡った経歴を持つ。世界中の酒を知る彼の目に、焼酎の特別さはその圧倒的なバリエーションにあると映ったようだ。

日本では当たり前に親しまれているが、焼酎というカテゴリの中で芋・麦・黒糖など異なる主要原料が存在し、さらにそこから蒸留方法や麹の違いによりフレーバーが無数に広がる酒は世界的に見ても類がない。バリエーションを活かして多くの使い道が生まれるスピリッツであるはずと語った。



コーラルピンクの色味が美しい彼のカクテルは、芋本来の香りを携える原酒、京屋酒造の「闇(くらやみ)」をベースに使用。グアバジュースの濃厚な甘みが芋の香りと調和し、ショートカクテルらしいtastyなキレも備えた味わいだ。


Imo kind of Daiquiri


Vlad Novikov氏 カクテル名:Peach Boy


Vlad氏は宮崎の蔵元同士のコミュニティに興味を示す。コミュニティでは蔵元同士が互いの焼酎を飲み交わして評価し合う場が設けられており、多様な価値観を交換する土壌がある。一方で焼酎作りに対し最も重要視することは何かと言う質問に対しては、三者三様であったそうだ。原料の畑の状態と言う人、産地と言う人、はたまた蒸留機の蒸気が流れる方向と答える人もおり、焼酎にこれだけの多様性がある理由を肌で感じたと言う。



桃太郎、と言う日本らしいタイトルを名付けた彼のカクテルは、華やかなエチケットが目を引く松露酒造の「Colorful」に、ウォッカやワインを絶妙な配合量で加えた意欲作。焼酎の味わいをしっかりとベースにしながら苦味のインパクトがあり、甘みも際立つ。焼酎へのリスペクトを強く感じる一杯だ。


Peach Boy


清崎雄二郎氏 カクテル名:Egg of Columbus(コロンブスの卵)


熊本県出身で昔から焼酎をよく飲んでいたという清崎氏。パネルセッションでは焼酎カクテルの可能性について、洋酒と比較した時の安価さもポイントであると伝えた。バーで利用される洋酒の価格は、ウイスキーを筆頭に近年高騰が激しい。一方で焼酎は数千円でプレミアム帯の銘柄も手に入るという市場だ。焼酎を使ってカクテルを作っていくことの経営的な価値にも気付かされるコメントであった。



清崎氏は蔵元の見学をする中で、ウーロンハイやジャスミンハイをはじめとする焼酎の茶割りの相性の良さに改めて気付かされ、バーテンダーらしいアレンジを今後考えていきたいと言う。今回制作したカクテルは、同じく蔵元の方達が好んでいたコーヒーに着想を得た、エスプレッソマティーニの変化球だ。霧島酒造の特別蒸留「きりしま」をベースに、コーヒーの蒸留水と宮崎らしい金柑ゼリーをデコレーションした本作。美しい透明色のカクテルからコーヒーの味わいがする新感覚の一杯で、コーヒーの苦味と芋の甘みを、金柑の爽やかな酸味が昇華させる。


Egg of Columbus


Tyson Buhler氏 カクテル名:Ajax Oldfashioned


Death & Co. のフード&ビバレッジディレクターを務めるTyson氏は、焼酎を用いたマティーニやオールドファッションドを2016年からニューヨーク店で提供する、いわば焼酎カクテルのパイオニアだ。彼が焼酎カクテルを制作する際に最もチャレンジングと感じているのが、斎藤氏も語ったバリエーションの多さだ。一本一本のフレーバーやアロマが全く異なるということは、それだけ材料の組み合わせに悩まされることになる。全般的にはシトラスの強調が高相性と考えてきたようだが、今回の訪日にて、ストロベリーなどのフルーティーな香りや、ほうじ茶と合わせてみたくなったと意欲的に語った。



彼が黒木本店の定番銘柄「㐂六(きろく)」と合わせたのはなんとバーボンウイスキー。それぞれを1:1に、ダークメープルシロップとビターズを加えたシンプルな構成の本作は、今まで口にする機会がなかったことが不思議なほどに、焼酎とバーボンの相性の良さを語る。


Ajax Oldfashioned



 

今回紹介した焼酎カクテルを、3月に期間限定オープンする渋谷のポップアップバーにて楽しむことができる。3/4(月)〜のWeekdayでは10蔵の宮崎の本格焼酎を飲み比べすることができ、最終2日間のWeekend 3/9(土)、10(日)にはゲストバーテンダーによる計4種のカクテルが提供される。最先端の焼酎トレンドを楽しめるこのスペシャルイベントをぜひお見逃しなく。





期間限定バー「MIYAZAKI SHOCHU POP UP」


日時:3月4日(月)~3月10日(日)

 平日 15:00~23:00/土曜 14:00~23:00/日曜 14:00~22:00


場所:カクウチベース POPUP  東京都渋谷区渋谷3丁目-21-3


提供内容:

<Weekday>

 3月4日(月)~8日(金)宮崎本格焼酎 ストレート、水割りなどで飲み比べ

<Weekend>

 3月9日(土)、10 日(日) 宮崎本格焼酎、スペシャル焼酎カクテル

 ※9 日(土)17:00~18:00 ゲストバーテンダー清崎雄二郎氏(Bar LIBRE)

  提供カクテル:Egg of Columbus、Peach Boy

 ※10日(日)17:00~18:00 ゲストバーテンダー斎藤秀幸氏(GOLD BAR)

  提供カクテル:Imo kind of Daiquiri、Ajax Oldfashioned


参加予定蔵:柳田酒造合名会社、渡邊酒造場、霧島酒造株式会社、井上酒造株式会社、櫻の郷酒造株式会社、雲海酒造株式会社、株式会社酒蔵王手門、株式会社落合酒造場(以上蔵人来場あり)、すき酒造株式会社、宝酒造(焼酎提供のみ)


※提供時刻などの詳細は上記インスタグラムアカウントにてご確認ください


 

MIYAZAKI SHOCHU EXPERIENCE

イベント主催:宮崎県

取材協力:児島麻理子 氏、株式会社glamourize

 

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