秋になると、無性に京都へ行きたくなる。
普段は歴史なんて関心が無いのに、この時ばかりは歴史的な建物や街並みに足を運び、美しい紅葉を拝みたくなるのはなぜだろうか。
京都での楽しみは美しい風景や郷土料理だけではない。
上質な時間を過ごす為に欠かせないのが、大人の特権であるお酒だ。
街酒場に行くのも一興だが、せっかくの旅先、少し背伸びをすると新しい発見があるかもしれない。
烏丸御池の一画に佇む、ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 京都 ”THE BAR”。
ホテルバーにしては珍しく、フロントのすぐ横に構えている。
高さ約7mの吹き抜けを活かしたバックバーは旅の開放感そのもののようで、日常を離れたことを実感させてくれる。
ロビーとバーの境目がなく、ソファで待ち合わせをする家族連れ、フロントに並ぶ人、バーカウンターで飲む人が一つの空間で融合している。
相手がチェックインしている間に1杯だけ頼む人、観光を満喫した1日の締めとして利用する人など、自由度の高さも魅力だ。
国内外から訪れる人のひと時を彩るTHE BARでは、今、秋の京都らしい「おもてなしカクテル」をいただくことができる。
今年4月に続き、企画を用意したのが鹿児島県の濵田酒造だ。
濵田酒造は、2018年に発売されたライチのような香りの焼酎「だいやめ〜DAIYAME〜」を筆頭に、国内のみならず海外にも本格焼酎を広めようと酒造りに取り組んでいる。
THE BAR バーテンダー小室健太氏と共に、「温故知新」をコンセプトにしたカクテルを2種類開発した。
カクテルの主役は本格麦焼酎「うかぜ」。鹿児島の方言で「大風」を意味する。
個性豊かな4つの原酒を1%単位でブレンドし、スッキリとした味わいの中にも麦本来の味わいを感じさせてくれる。今年のインターナショナル・ワイン&スピリッツコンペティション(WSC)で金賞を受賞している実力派だ。
小室氏は、うかぜでどの様におもてなしてくれるのだろうか。
カクテルのテイスティングレポートとメイキングショットと共に紹介する。
1杯目は「懐古」。
ミルク、生クリーム、葡萄リキュールとうかぜを合わせたカクテルだ。
最初にボストンシェイクで優しく混ぜ合わせた後、シェイカーに移し替えて空気を含ませるようにしっかりシェイクする。
ふんわりとした口当たりの中に葡萄の香りや和三盆の優しい甘さを感じた後、スッキリと締まるところにうかぜらしさを感じる。
元となったのはバーボンで作るクラシックカクテル「カウボーイ」。
西部開拓時代の馬に乗って牛の世話をする「牛飼い」から名付けられたカクテルだ。
小室さんは、10月に京都で開かれる「時代祭」で堂々と歩む馬の姿とカウボーイを重ね、考案した。
カウボーイから受けたインスピレーションは、「馬」の他にもある。
例えば、カクテルフォーマー。
白インゲンのフォーマーを使いクリーミーさを出しているが、これはカウボーイがよく食べていたチリコンカンという豆料理とリンクさせている。
さらに、器はより京都らしさを感じてもらうために清水焼きのカップを使用している。
ちょうど私が訪れた日に時代祭が開かれており、その様子を思い出しながらいただいた。
「懐古」はデザート感覚でいただける点が特徴だ。
通常のカウボーイはミルクと合わせることでバーボン本来の苦味や香り、アルコール感を感じられる。それに対し、「懐古」はミルクと調和しており、「大人のスイーツ」と言ったところだろうか。
葡萄の形をした和菓子を食べると、また味の変化を楽しめる。
カクテルのお供に出していただいたのは、京菓子處 鼓月のお饅頭「摘み果 葡萄」。
摘みたての葡萄のような果実感が楽しめる焼き饅頭で、果肉が全体の半分を占めている。
芳醇な赤ワインを思わせる風味で、一口かじった後のカクテルは不思議とうかぜの麦本来の甘味が際立つ。
「懐古」はアルコール度数が低めに作られているので、普段お酒を飲まない人にとっても挑戦しやすい一杯だ。
お次にいただいたのは、ショートカクテルの「新風」。
新たなカクテルのムーブメントを巻き起こしたいという想いで作られたカクテルだ。
逆三角形のカクテルグラスのシルエットから旋風を思い起こされる。
使っているのは、ミルクと生クリーム、カカオリキュールにほんの少しウイスキーを加えている。
口に含むと、最初に甘い香りとうかぜの芳醇さが感じ取れ、最後にキリッとしたライムの香りがするバランスの良い1杯だ。
こちらのカクテルはお好みでバニラシロップを足して味の変化を楽しめる。
試しに1滴垂らすと、控えめな甘さはそのままクリーム感がダイレクトに感じられ、一気にスイーツ度が増す。
新風はショートカクテルならではの、お酒の濃厚さがギュっと詰まっている。うかぜ本来の味をより感じたい人にはおすすめだ。
今回のカクテルは2種類ともミルクとクリームを使用している。
小室さんに聞くと、「初めてうかぜを口にした時、『まるでパンのような香ばしさと甘みだ』と感じ、乳製品を使おうと決めました」と言う。
確かに、私自身も「摘み果 葡萄」を食べた後に、幼少期にパンと牛乳を一緒に食べた時を思い出した。
これまで麦焼酎は自分にとって縁遠い存在だったが、身近な味の体験とリンクするとは驚きだ。
さらに、麦が原料であることからウイスキーなど他の麦由来のスピリッツとの相性も良い。
麦焼酎は水や炭酸で割る飲み方が主流だが、カクテルのスピリッツとしてのポテンシャルの高さを発見した。
小室さんは「普段、焼酎に苦手意識を持っている人にこそ飲んで欲しい」と言う。
今回おもてなしいただいた、「懐古」と「新風」。
日本国内であれば誰もが知っている「焼酎」の伝統を守りつつ、カクテルのメインスピリッツとして進化させ焼酎の未来を守ろうとする挑戦は、温故知新そのものだ。
そして、私自身もカクテルをいただくことで伝統を継承する一員になれることが少し誇らしい。
THE BARで過ごした時間は1時間ほどだったが、感動と発見の連続だった。
旅先での新たな発見は、外に出て得られるものだけではない。バーカウンターに座っただけでもできるのだ。
<提供店舗>
ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 京都
1階「THE BAR」
住所 〒604-0836 京都市中京区船屋町420
アクセス 京都市営地下鉄烏丸線・東西線「烏丸御池」駅(1番出口) 徒歩約2分
営業時間 17:00~23:00(L.O. 22:30)
Photo&Writer
satoe mitsu
BARのライター、PRパーソン。「人生はバーを軸に豊かにできる」との信念を持ち、バーやお酒の魅力をInstagramを中心に紹介。女性が1人で気軽に入れるバーを紹介する情報発信アカウントも準備中。
Instagram:@satewie_cocktails
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