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iichiko彩天 カクテルコンペティション 2025 レポート

  • 執筆者の写真: 中島 祐哉
    中島 祐哉
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

更新日:8 時間前

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黄金の屏風が煌めくパフォーマンスステージ、それを照らすネオンライトに快活なMC、残り時間を刻む大ビジョン。

会場入りした瞬間、クラブハウスのイベントであるかと錯覚させたのは、ステージの華々しさだけではない。ドリンクを片手にスタンディングで沸き立つ来場者の温度が、僕の知る従来のカクテルコンペティションと大きく異なっていたからだ。


障子の飾り棚に並べられるのは、本格焼酎 iichiko彩天(いいちこ さいてん)。日本生まれ、アメリカ育ちというアイデンティティを持つ本商品を表現するかのように、和の建具で構成された会場をクラブポップなBGMがアメリカナイズしていた。


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MCの竹中三佳さん(左)とMASAさん(右)
MCの竹中三佳さん(左)とMASAさん(右)

そう、この日は三和酒類株式会社が主催する、iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション のジャパンファイナルだ。


アメリカをはじめ世界のバーシーンを経て、今年日本でローンチされたiichiko 彩天。僕らが慣れ親しんできた「あの」いいちこと比較して、アルコール度数─すなわち味わいと香りの骨子─を強め、様々なスタイルのカクテルベースに使われることを意識された商品。

海外バーテンダーをゲストに招いた6月のローンチイベントから、9月のネグローニウィークではCAMPARIとのコラボレーションで生み出された麹ネグローニの味わいがまだ記憶に新しい中、厳しい予選審査を経てこの日記念すべき第1回大会が開催された。


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さて、ファイナリストは7名。北は北海道から南は熊本県まで、世界を驚かせる一杯を!というメッセージが添えられたこのイベントに相応しい、日本各地の特色・特産を活かしたカクテルが生み出される予感がした。各自のパフォーマンスの後には、隣接会場にて来場者も参加可能なテイスティング・セッションが行われる。誰がチャンピオンに選ばれるか思いを馳せながら、全7品のカクテルを満喫できるというわけだ。


思い返せば僕とiichiko彩天の出会いは2024年2月。LAから来日したTom Liu氏のゲストバーテンディングで「彩天のおまかせコース」4杯をいただき、様々な副材料との相性の良さに驚いたものだ。当時よりも少しスタイリッシュにリデザインされた彩天のボトルを見ながら、こうしてカクテルコンペティションの初代チャンピオンが誕生する瞬間に立ち会えることをとても誇りに思う。



各自個性的なパフォーマンスと、カクテル作りのアプローチが見られる中、本大会を優勝したのは髙橋 裕也さんのOedo Fashioned(オーエド ファッションド)。


ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜 の 髙橋裕也さん
ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜 の 髙橋裕也さん

審査員を務めるSG Groupの後閑さんからも絶賛だったそのキャッチーな作品名は、日本最古のカクテルとされる柳蔭(やなぎかげ)のツイストとして、世界的カクテルオールドファッションドのように広がっていってほしいとの思いが込められる。


パフォーマンス冒頭で宣言された通り、カクテルのキー食材は3つ、玄米、みりん、そして醤油。江戸時代から食卓に並んでいたこれらの食材がiichiko彩天に新たな色を加えることをコンセプトに、炒めた玄米を漬け込んだみりん、さらに焦がし醤油で風味を出した玄米を抽出したリキッドなど、原材料の掛け合わせだけでなくiichiko彩天に彼が加えたいと感じた味を自ら生み出し実現していく。


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5分間の舞台においてその全容を知るすべもないが、饒舌で華やかな彼のパフォーマンスの背景にある妥協ないカクテル作りへのこだわりには、その一杯からカクテルファン・本格焼酎ファンを生み出す覚悟が感じられた。


髙橋裕也さんのパフォーマンス映像はこちら:



準優勝となったのは、木村 豪朗さんのNURTURE(ナーチュア)。


Dining bar JIMHALL(石川県) の 木村豪朗さん
Dining bar JIMHALL(石川県) の 木村豪朗さん
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優勝した髙橋さんが最終の7番手であったのと対照的に、この日トップバッターとして会場のボルテージを一気に高めた木村さん。iichiko彩天と同じく麹由来の発酵食材であるみりんと甘酒を活かした、旨みが押し寄せる味わいのカクテルであり、甘酒はみりんを搾った際に生まれる酒粕(こぼれ梅)から作ることで材料同士の相性の良さ、フードロスへの配慮を実現している。



そして3位入賞したのは、光田 恭祐さんの黄金の陽(コガネノヒ)。


LES CLOS(熊本県) の 光田恭祐さん
LES CLOS(熊本県) の 光田恭祐さん
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熊本の郷土料理、辛子蓮根に着想を得たとの通り、ツンとくる辛さと晩柑の酸味が癖になる一杯。蓮根を3週間iichiko彩天に漬け込み、食材の出汁をふんだんに用いるなど、ビストロ勤務という経歴が成せるアプローチに審査員も興味津々となっていた。


One by one coffee(東京) の 金城流弥さん
One by one coffee(東京) の 金城流弥さん
パークハイアット京都 の 釜田椋安さん
パークハイアット京都 の 釜田椋安さん
フォーシーズンズホテル東京大手町 VIRTÙ の Jo SangWoonさん
フォーシーズンズホテル東京大手町 VIRTÙ の Jo SangWoonさん
cocktailbar BLUEMOON(北海道) の 竹下紗希さん
cocktailbar BLUEMOON(北海道) の 竹下紗希さん

出場者のレベルの高さを受け、次は世界大会の可能性を感じさせながら幕を閉じたiichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション2025。


カクテルの味わいや論理性を競い合うコンペティションという場は、バーファンとしての日常からはある種非日常的な、酒類メーカーやバーテンダーという提供側が主体となるイベントと感じられるかもしれない。

しかし僕らのように酒の「受け手」であっても、新たな酒、そのカクテル作りの最前線はやはり面白い。あの食材をどうやって液体にするのだろう、なぜその組み合わせに目をつけたのだろうと、バーテンダーたちが考え抜いたアイデアに触れるのは、キャンバスから多彩なアートが生まれる様子を眺めているかのようだ。


自分にとっても大切な酒であるいいちこ、本格焼酎のカクテルが、こうして毎年世界を舞台に愛飲されることを願っている。


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(取材日 2025年11月8日)

コメント


Writer & Photo
中島 祐哉(Yuya Nakashima)

BARのフォトライター、メディア運営。

2020年にポータルサイト「BARLD(バールド)」を設立。
普段バーを利用しない人にこそ魅力に触れてほしいと、バーやパブの美しい内観とストーリーに着目。都内を中心に自身が取材した60店舗以上を紹介し、名画のように切り取った写真と軽やかな文章で店の魅力を発信する。

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