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Value of Bar(tender) ①序章 -長きに通えるバー

  • 執筆者の写真: 中島 祐哉
    中島 祐哉
  • 8月3日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月10日


素敵なバーは世にごまんとある。だが長きに通えるバーを見つけるのは難しい。


その日2杯目のカクテルを飲みながら、常連客たちとカウンターを共有しながらそんなことを考えた。金曜の夜10時、バーのコアタイムを迎えたBar Tarrow’sは賑わいを見せていて、マスターも煙草に火をつけながら、心地よい温度感のまま真夜中へ向かおうとしている。


訪れる度に、インテリアやBGMが彩る上質な空間で、格別に美味い酒とつまみが出され気分を高めてくれる。僕らがバーに求めるそんなシンプルなことを追求しているのがこの店であると思う。だから僕もここで飲む時は酒やカクテルのやたら小難しい話は考えない。美味しく、楽しく過ごすための最低限の背景理解と敬意こそあれば良い。


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期待を裏切らないこと。

これはマスターの中村太郎さんがバーテンダーとして大切にしている言葉だ。僕が初めて訪れた時には、チャーム(お通し)を5,6種のメニューから選ばせてもらえることに驚き、大きくカットされた虎屋の「面影」、その黒糖の効いた味わいが酒とこれほどに相性が良いものかと二度驚かされた。カクテルやウイスキーばかりでなく、ブランデーや、果実のリキュールをロックやソーダ割でシンプルに飲む楽しさを教えてくれたのもTarrow’sだ。


客の期待に沿わぬことの無いよう、マスターの飽くなき探究心とプライドが産み出す商材への知識、あるいは奥ゆかしい教養が、おそらくは僕をこの店に向かわせる。それは必ずしも、新しい酒や、未知なるフレーバーの体験である必要はない。ここに来れば旨い酒を気持ちよく飲ませてくれる、そう確信させるパワー。それこそが「長きに通えるバー」の理由の正体であるように思う。



たくさんの名店バーを紹介する活動をしてきて、バーに通う理由が人それぞれであることは相応に実感してきた。マスターに会いに来ている人、新たな酒を学びたい人、音楽や読書を楽しむ時間をつくる人。

そのどれもに敬意を払ったうえで、僕が見聞きしたバーの価値、バーテンダーが提供してくれる時間の心地良さの根源のようなものを、名店をつくり出すマスターの言葉とともに書き綴ってみたいと思う。





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取材全面協力 中村太郎 氏

神楽坂 Bar Tarrow'sのオーナーバーテンダー。銀座や白金台のバーでの修行後、2018年に独立しBar Tarrow'sをオープン。

「普通のバー」であることを謙虚に謳いながらも、経験に裏打ちされたカクテルのクオリティ、豊富なバックバーから引き出されるハードリカーの知識は圧巻であり、疑いなく神楽坂のバーシーンを牽引する店の一つ。ここでしか味わえない居心地の良さを求め、常連からバービギナーまで幅広くファンが訪れる。



Bar Tarrow's(バータロウズ)店舗情報

東京都新宿区神楽坂3-6-29MIビル3F

  • 飯田橋駅西口 徒歩4分

  • 神楽坂駅 徒歩8分

TEL:03-6457-5565

営業時間:18:00〜26:00(日曜定休)


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Writer & Photo
中島 祐哉(Yuya Nakashima)

BARのフォトライター、メディア運営。

2020年にポータルサイト「BARLD(バールド)」を設立。
普段バーを利用しない人にこそ魅力に触れてほしいと、バーやパブの美しい内観とストーリーに着目。都内を中心に自身が取材した60店舗以上を紹介し、名画のように切り取った写真と軽やかな文章で店の魅力を発信する。

© BARLD  All Rights Reserved.

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