BARをバーテンダーのホームとするなら、バーテンダーが一同会いに来てくれるイベント、それが「Bar Show」だ。
初夏のような心地よい晴天となった5/11-12の土日、東京ドームホールは延べ14500人のバーファンによって埋め尽くされた。人気の酒ブランドをはじめとするバー業界に関連した50以上のメーカーブースや、ビッグネームたちの貴重な講演を目掛けて意気揚々と会場を練り歩く。
各ブースを盛り上げるメインコンテンツこそが、バーテンダーたちによるカクテル提供だ。それぞれのブランドとのコラボレーションで全国から名碗が集まり、商材の魅力を引き出すオリジナルの一杯を振る舞う。
この「試飲」への力の入れようこそバーショーがBARの祭典と呼ばれる所以で、Asiaトップ50に選出される名門や、カクテルコンペティションの優勝者など、日本のバーシーンを牽引するバーテンダーたちのカクテルを無料で飲み放題(!)という夢のようなイベントとなっている。
そんなバーショーの模様を、まずは印象的だったカクテルのブースから見て行こう。
バーファンならば一度はそのボトルを見たことがあるだろうプレミアムテキーラのClase Azul(クラセアスール)。即席とは思えないほどの美しいバックバーで出迎える。
ブランドアンバサダーのフェリー氏が手がける「プラタ・パロマ」は、アガベ本来の風味をダイレクトに感じられる一杯。
見慣れないバーボンがある!と入場早々筆者のテンションを高めてくれたRabbit Hole。ペルノリカール社が2月に発売したばかりのこのブランドは、ヘビーチャーされた新樽で熟成したバーボンを、さらにスペイン産のシェリー樽で熟成させるという新たなスタイルの1本。
バーボンの定番カクテル、ウイスキーサワーでいただいた。
ブレンデッドウイスキーの中でも屈指の人気を誇るMONKEY SHOULDER(モンキーショルダー)のブース。
京都は東山五条のカクテルスタンド、「フレく」のオーナーバーテンダー齋藤隆一氏による「ファンキージャムサワー」をいただいた。チャイスパイスの香りを活かし、グラストップに苺ジャムで作られたデコレーションを添えたクラフトカクテルは、サッと試飲するだけではあまりに勿体無いクオリティーだ。
華やかなブランドカラーのSILENT POOL GIN。
弾ける笑顔を見せてくれたのはGOLD BAR at EDITIONの岸田茉利奈氏。レモンジュースとハチミツを加えたシンプルなカクテル、ビーズニーズで同ブランドのアロマティックな魅力を非常にテイスティに昇華させた。
「WAPIRITS(和ピリッツ)」の通称で知られる日本発のカクテルベース・スピリッツのTUMUGI。
名古屋Bar K-9の後藤啓輔氏はモスコミュールのツイスト「TUMTUM MULE」で、TUMUGIの麹&ボタニカルという一見複雑な味わいを高い解像度で表現した。
試飲サイズとはいえ、これだけ本格的なカクテルのラッシュに、酒飲みの来場者たちもペース配分を意識せずにはいられない。会場内にはゲームの回復ポイントかのように「WATER」の看板が点在。入場時に配られたミネラルウォーターに注ぎ足しながら、次はどのブースへ行こうかと会場マップを広げる姿はさながら少年の冒険譚のようで微笑ましい。
会場中央のメインステージでは、バーテンダーが腕を競う「フレアバーテンディング」や「なでしこカップ」を筆頭に、様々なパフォーマンスが行われる。
アイラ島のシングルモルトウイスキーBRUICHLADDICH(ブルックラディ)のブランドアンバサダーJACK氏は各種酒イベントでの定番の顔。「最後まで聞いてもらえるようにグッズをプレゼントしながら進めていきます!」と早押しクイズ形式で進むブランドコンセプトの説明に、一同は大盛り上がりだ。
メーカーブースのクオリティにも注目。カンパリやワイルドターキーで知られるCAMPARI GROUPは、百貨店の一角かと錯覚するほどに同社の代表ブランドをビビッドに展示する。
桜尾ジンで知られるSAKURAO DISTILLERYのブーステーマはなんとカジノ。
ディーラーに扮するバーテンダーの雰囲気に惹き込まれる。
試飲以外の魅力もしっかり味わって少し酔いが覚めてきたところに、普段なかなか手の届かないハイエンドなお酒でクロージングと行こう。
バーボンのFourRosesブースでは、銀の薔薇が美しい最高級ランクの「プラチナ」を試飲可能という出血大サービス。個人的にも思い入れのある一杯であり、思いがけない再会に嬉しくなる。
ライウイスキーの定番にして王道のホイッスルピッグはシンプルなソーダ割り「ライボール」で提供。キャラメルと焼きオレンジのフレーバーをソーダが引き立てる。
楽しめるのは洋酒だけではない。今や国内にとどまらず世界中で大人気の獺祭は、乾杯のシーンにも適した「45にごりスパークリング」や、23%という極限まで磨いた山田錦でつくられる「磨き二割三分」を試飲提供。
数多くのブースを紹介してきたが、これらは二日間のプログラムのほんの一部分だ。今年はアニメとのコラボレーションなど、お酒に強くない方でも楽しめる展示が数多くあり、これまで以上に自分のペースでゆっくりと過ごせるイベントとなっている。
酒やカクテルの感想・質問をスタッフと語らえるバーの本質はそのままに、ここでの出会いが新たなバーを訪れるきっかけになるはずだ。ぜひ貴方も来年は会場にて!
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