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アフタヌーン・カクテルに誘われて/中野 BAR CONNECT

執筆者の写真: 中島 祐哉中島 祐哉

中野が「サブカルチャーの聖地」と呼ばれ始めてからはや四半世紀。世代問わず人々が集うこの街は、商店街から裏通りまで飲食店の活気に溢れる。


そんな賑やかな風景を通り過ぎた終点に、昨年夏オーセンティックバーがオープンした。贅沢に休日の昼下がりからお邪魔してみよう。




バーコネクトは、中野ブロードウェイの脇通り、早稲田通りと交差する手前にテナントを構えている。非日常感のある煉瓦の階段を降りた地下に広がるオーセンティックバーだ。

美しいレンガ調の入り口

入店するとまず印象的なのはテナントの広さ。煉瓦で西洋感を残す玄関スペースから、コンクリート打ちっ放しのモダンな店内に切り替わる。店の主役であるカウンターは座席数を7席に抑え、隣が気にならない贅沢な空間の使い方だ。


この日は早い時間の入店であったため、時間限定で提供しているアフタヌーンメニューを紹介してくれた。ドリンク1杯におつまみの付いたお得なセット、さらにはカバーチャージもセット価格に含まれるということで、ハッピーアワーのようなお得な気分だ。

店内奥からの内観。程よくカジュアルさを残した雰囲気

さて初めてのバーで少々頭を悩ませるのが、一杯目にオーダーすべきドリンク。特にルールがないとはいえ、カクテルをメインに提供しているのか、ウイスキーなどスピリッツが豊富なのか、、お店がオススメするものを飲んでみたいというのが客側の心理だ。 初めてであることを伝えると、マスターが率先してオススメを教えてくれた。こちらコネクトでは2種類のハウス・ジンを用意しており、苦手でなければまずはそのジントニックをオススメしていること。季節のフルーツカクテルや、珍しいボトラーズウイスキー、クラフトジンも豊富に用意していること。


特徴的なのがハウスジンのチョイス。一つはプリマスというイングリッシュジンの定番銘柄。もう一つはクラフトジンとして近年非常に人気の高いMonkey47だ。後者はハイエンドな商品だが、バーで飲むジントニックのレベルの高さを感じてほしいと思い採用を決めたそうだ。

ストレートからトニック割まで幅広く楽しめるMonkey47

オススメされた通り1杯目はジントニックにした。しっかりと絞ったライムをグラスに投入し、ソーダを入れてからトニックウォーター、そしてバースプーンでライム果汁をしっかりとかき上げる。

その製法とプリマスの癖のない味わいゆえか、ライムがしっかりと効いた爽やかな甘みのジントニックだ。タンブラーはぼってりとした大ぶりの形状でゴクゴクと楽しめるようになっており、ついつい進んでしまう。


程なく提供されたのはアフタヌーンメニューのフードたち。おつまみは8種ほどから3つ選べるようになっている。チョコレートにキャラメリゼのナッツ、そして塩味担当のフエ(白カビサラミ)と我ながら絶妙な組み合わせだ。

チョコレートはオレンジピールとオレンジリキュールを練り込んだ自家製のもので、こうした軽いおつまみから、ピッツァなど軽食まで用意。おつまみはジンとウイスキーのいずれかと相性が良いものを取り揃えているそうだ。その日飲みたいドリンクを伝えれば、ベストなペアリングを提案してくれることだろう。

素材の相性まで吟味した特製おつまみ

こうしたアフタヌーンメニューに加え、SNS限定でバービギナー向けのお得な3杯セットなどを提供しているのも嬉しいポイント。好みのカクテルがわからないという方も、ぜひマスターに相談してみよう。


 

マスターの大澤氏は、地元の相模大野をはじめ、都内を中心にオーセンティックバーで経験を積み、昨年8月にここコネクトをオープンした。中野で長年バーテンダーをやってきた経験から、この店のように静かにゆったりと楽しめるバーが必要と感じたそうだ。


中野といえば大衆居酒屋でワイワイ楽しめる街という印象があるが、大澤氏はその騒がしい空気感をオーセンティックバーへ持ち込むことはNGとハッキリ決めている。


コネクトという店名には、人やお酒との良縁をつなぐ、そしてそれぞれの客がこの先訪れるであろうバーとの縁までをつなぐという願いが込められている。だからこそ客一人ひとりと真摯に向き合い、バーであるべき紳士的な飲み方を身につけてほしいと考えているそうだ。慣れ親しんだ中野で店を構えるからこその愛と言える。


 

夕刻を迎える頃、照明が暗くなり手元にろうそくが置かれた。

暗くなると、匂いや音の情報に対し感覚が研ぎ澄まされる。氷が落ちるカランという音から周囲の話し声まで、バーという贅沢な空間を共に作り出すエッセンスに感じられる。


隣のお客さんは、Monkey47のジントニックを大層気に入ったようで、次はロックを頼んでいた。店としての基準を設け、そこから客自ら広げて楽しんでいくというのは、バーの醍醐味でありバーテンダーの腕の見せ所と言えるだろう。

ジン好きのニーズに応える豊富な品揃え

筆者も上機嫌に筆を進めていると、ウイスキーの味が恋しくなってしまった。ウイスキーを使った甘めのカクテルをとお願いしたところ、いくつか丁寧に提案をしてくれる。

今回は初めていただく「ロブロイ」というカクテルをオーダーした。


ロブロイは、スコッチウイスキーにスイートベルモットを合わせたカクテル。同じくウイスキーとベルモットのカクテルではカクテルの女王:マンハッタンが有名だが、そちらに使われるウイスキーはカナディアン、バーボン、ライウイスキーのいずれかが定番。

一方ロブロイは「パーフェクト・マンハッタン」という別名をもち、スコッチウイスキー本来のテイストを活かしたカクテルとして支持される。


口に含んだ瞬間は、スコッチウイスキーそのままのような樽香。そこから一気にベルモットの甘みが訪れる。アルコール度数は高めだが、丁寧なステアにより素材が見事に調和し、適度な清涼感のある良い飲み口に仕上がっている。さすがのメイキングセンスに脱帽だ。


マンハッタンと比べウイスキーの味わいがハッキリしているように感じた。筆者がスコッチウイスキーを飲む機会が多いことも影響していそうだ。小ぶりのグラスを軽く傾け、ロックやストレートを飲む時のように香りを楽しんでしまう。


8割方飲んだところで、大好物のチェリーをいただく。カクテルに添えられたチェリーは、筆者にとってはショートケーキのイチゴ。こちらもウイスキーの香りを存分に含んだ期待通りの美味しさで、思わず笑みが溢れてしまった。


 

オーセンティックバーとしての格式ある雰囲気はもちろんだが、コネクトの魅力は大澤氏のユーモアある接客なくては語れない。本人が「僕はこんなノリですが、お店はしっかりとしたオーセンティックバーなんです」と笑いながら話すように、明朗でいておしゃべり好きなマスターが、ジョークも織り交ぜながら柔らかな場づくりをおこなっている。

マスターの大澤氏。棚にはオススメのジンが所狭しと並ぶ

一人で訪れる客が多いのは、カクテルやスピリッツの魅力はもちろん、そんな気取らないホスピタリティに癒されたいからであろう。コネクトで過ごす時間が日常に彩りを与えるものであってほしい、大澤氏の接客や、提供されるドリンク・フードへのこだわりを見ていると、そんな思いが溢れ出てくるようだ。


バーには人を笑顔にする力がある。そしてその体験が、まだ見ぬバーとの出会いをつないでいく。

満足げな客たちの表情を見ていると、「コネクト」という言葉の意義深さを胸に刻まずにはいられないひと時であった。


 

中野 BAR CONNECT


東京都中野区中野5-50-4 リカム10ビルB1F

TEL 03-4500-9851

アクセス

 中野駅北口 徒歩5分

営業時間

 平日 18:00〜25:00(24:00LAST IN)

 金・土・祝前日 18:00〜27:00(26:00LAST IN)

 日・祝 15:00〜23:00(22:00LAST IN)

定休日

 不定休(SNSなどで告知)





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Writer & Photo
中島 祐哉(Yuya Nakashima)

BARのフォトライター、メディア運営。

2020年にポータルサイト「BARLD(バールド)」を設立。
普段バーを利用しない人にこそ魅力に触れてほしいと、バーやパブの美しい内観とストーリーに着目。都内を中心に自身が取材した60店舗以上を紹介し、名画のように切り取った写真と軽やかな文章で店の魅力を発信する。

© BARLD  All Rights Reserved.

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